
2017年3月に発表された申し合わせを受けて、メガバンクや地方銀行が提供するカードローンの借入条件や表記の見直しが進められています。
2017年6月に中間報告として、「銀行カードローンに関する全銀協の取組みについて」が発表されました。規制強化の流れを受けて、銀行はどう対応したのでしょうか。公表された取組内容を見てみましょう。
全国銀行協会(全銀協)の「申し合わせ」の内容とは
そもそも今回の規制強化の機運は、銀行カードローンの融資残高の増加と、それによる銀行カードローン利用者の自己破産が増加したことが背景にあります。
利用者にとって有利な借入条件をうたうことで短期間で貸付残高が大きく伸ばした銀行カードローンですが、その結果自己破産などの返済トラブルも急増したことが大きな問題として注目されるようになります。
2017年3月には「申し合わせ」による自主規制を決定。中間報告を見る前に、その内容がどのようなものだったのかを発表された資料から引用して見てみましょう。
1.配慮に欠けた広告・宣伝の抑制
銀行は、消費者向け貸付けに関する広告・宣伝を実施する場合、改正貸金業法の趣旨を踏まえて適切な表示等を行うよう努める。
例えば、銀行カードローンが改正貸金業法による総量規制の対象外であることや、高額の借り入れであっても年収証明書が不要であることを強調するなど、銀行による貸付けがお客さまにとって過剰な借り入れとならないための配慮に欠けた表示等を行わないよう努める。
また、広告・宣伝の中でお客さまの過剰な借り入れに対して注意喚起を行っていく等、多重債務の発生抑制にも努める。2.健全な消費者金融市場の形成に向けた審査態勢等の整備
各会員銀行は、消費者向け貸付けに際し、利用者利便と顧客保護の両面に十分配慮し、消費者向け貸付けがお客さまにとって過剰な借り入れとならないよう、例えば以下の点に留意するとともに、各行がそれぞれの事情に応じた創意工夫によって、健全な消費者金融市場の形成に向けた審査態勢等を構築するよう努める。
1.年収証明書や自ら保有するお客さまの情報等によって、お客さまの収入状況や返済能力をより正確に把握することに努める。例えば、改正貸金業法上、自社で50万円超または他社借入を含めた総額で100万円超の貸出審査には年収証明書が必要とされていることにも留意する。
2.貸付け審査にあたり、信用情報機関の情報等を活用するなどして、自行・他行カードローン、貸金業者の貸付けを勘案して返済能力等を確認するよう努める。
3.信用保証会社による代弁率や応諾率の推移、年収に対する借入の状況と代弁率との相関関係等を定期的に分析・把握し、審査の適切性について信用保証会社と深度あるコミュニケーションに努める。例えば、個人の年収に対する借入額の比率を1/3以内に制限する総量規制の効果として、多重債務の発生が一定程度に抑制されている状況等を踏まえ、銀行カードローンにおいても、個人の年収に対する借入額の比率を意識した代弁率のコントロール等を行うべく信用保証会社と審査方針等を協議するよう努める。
4.貸付け実施後においても、お客さまの状況等に応じて、定期的に信用状況の変動の把握に努める。
申し合わせから3ヶ月。対応状況はどうなった?
申し合わせを受けて銀行各行はそれぞれ提供するカードローンのサービスや広告内容の見直しを進めていますが、その対応状況が調査・公表されました。
アンケートによっておこなわれた今回の調査では、カードローンを提供するほとんどの銀行でサービスや広告内容の見直しがおこなわれたことが明らかになりました。その内容を見てみましょう。
配慮に欠けた表示等の抑制
「総量規制の対象外」や「年収証明書不要」など、誰でも借り入れできるような誤解を招く「配慮に欠けた表示等の抑制」では、全ての銀行が取りやめ、もしくは見直しの対応を検討中と回答しました。
内訳を見ると、
- 「総量規制の対象外(12行→4行)」
- 「年収証明書不要(92行→47行)」
- 「下限金利を強調(62行→35行)」
- 「審査の早さを過度に強調(55行→35行)」
という回答となり、特に「年収証明書不要」の表記を中心に、広告表現の見直しが進められています。
カードローン業務における審査態勢等
広告表記の見直しと合わせて進められた審査態勢の見直しでは、
- 「年収証明書取得基準の見直し(115行・検討中を含む)」
- 「極度額(限度額)における年収債務比率の算出方法(81行・検討中を含む)」
- 「信用保証会社とのコミュニケーション(未構築25行→未構築2行)」
- 「信用情報機関からの貸し付け後の情報取得(未実施69行→未実施29行)」
と、審査の厳格化や貸し付け実施後のフォロー体制の強化に向けて動いているとする回答が過半数を占めました。
今後の銀行カードローンはどうなる?
このように自主規制による申し込み・審査の厳格化が進んでいる銀行カードローンですが、その動向は今後どうなるのでしょうか。
自主規制による厳格化こそ進んでいるものの、一部から貸金業法に定める「総量規制」と同様の規制を求める声もあり、更なる厳格化が進む可能性は小さいものではありません。
今回の中間報告では、今後も全銀協を中心にカードローンの申し込み・審査の健全化を進めるとしていますが、その進捗によっては法規制の可能性は無視できないといえそうです。
おわりに
メディアに取り上げられたことから注目を集めている銀行カードローンの貸し付け問題ですが、業界団体である全銀協を中心に健全化を進めていることが発表されました。
今後の動向次第では総量規制と同様の法規制が導入される可能性は決して小さいものではなく、自主規制の内容などは今後も要注目と言えそうです。