金融庁、銀行カードローンに異例の意見表明。その影響は?

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急速に貸付残高を伸ばし、消費者金融カードローンの貸付残高を上回った銀行カードローンですが、近年では規制強化の声が強くなっています。
銀行側は自主規制の導入・強化によりこの問題を乗り切ろうとしていますが、監督官庁である金融庁がこの方針に異議を唱えています。
金融庁は銀行カードローンの自主規制の導入・強化に対して、どのように対応しているのでしょうか。公表された資料から、その内容を見てみましょう。

日本の金融機関を監督する「金融庁」

「日本の金融の機能の安定を確保し、預金者、保険契約者、金融商品の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに、金融の円滑を図ることを任務」として、金融庁設置法3条に基づいて設置されている内閣府の外局が「金融庁(FSA)」です。
金融庁は業務の一環として国内銀行と定期的に意見交換会を開催していますが、今回の銀行カードローンに関する意見は、この意見交換会の中でおこなわれました。

今回の意見交換会で取り上げられた主な内容

意見交換会では主要銀行と全国地方銀行協会、全国信用金庫協会に対して個別に論点が提起され、銀行カードローンに対する厳しい意見は主要行に対する論点の中で取り上げられました。その内容を見てみましょう。

  • 銀行カードローンについては、各行において全国銀行協会の申し合わせを踏まえた業務運営の見直しを検討・実施していると承知。他方、日弁連は「申し合わせによる対応は不十分であり、あくまで総量規制を銀行に適用すべき」との会長声明を発表するなど、依然として各方面の関心は高い。
  • 当庁(金融庁)としては、申し合わせ以降も、銀行の取組み状況をモニタリングしてきたが、特に審査基準の厳格化に関しては、取組みに遅れが見られている状況。銀行カードローンの業務運営の適正化を推進すべく、更なる対応を検討中。
  • 貸金業法改正時に総量規制が導入された際、銀行が規制の対象外になった理由の一つは、銀行は社会的責任を有し、厳しい監督に服しているので、過剰貸付の抑止を含めた利用者保護が確保されていると考えられたからである。こうした前提が満たされなければ、規制の対象外とする根拠が薄弱になることを十分に認識し、業務運営の改善を迅速に進めていただきたい。

引用:http://www.fsa.go.jp/common/ronten/201707/01.pdf

銀行カードローンが導入している自主規制の内容

配慮に欠けた表示等の抑制

「総量規制の対象外」や「年収証明書不要」など、誰でも借り入れできるような誤解を招く「配慮に欠けた表示等の抑制」では、全ての銀行が取りやめ、もしくは見直しの対応を検討中と回答しました。
内訳を見ると、

  • 「総量規制の対象外(12行→4行)」
  • 「年収証明書不要(92行→47行)」
  • 「下限金利を強調(62行→35行)」
  • 「審査の早さを過度に強調(55行→35行)」

という回答となり、特に「年収証明書不要」の表記を中心に、広告表現の見直しが進められています。

カードローン業務における審査態勢等

広告表記の見直しと合わせて進められた審査態勢の見直しでは、

  • 「年収証明書取得基準の見直し(115行・検討中を含む)」
  • 「極度額(限度額)における年収債務比率の算出方法(81行・検討中を含む)」
  • 「信用保証会社とのコミュニケーション(未構築25行→未構築2行)」
  • 「信用情報機関からの貸し付け後の情報取得(未実施69行→未実施29行)」

と、審査の厳格化や貸し付け実施後のフォロー体制の強化に向けて動いているとする回答が過半数を占めました。

引用:進む見直し。銀行カードローンの表記や審査はどう変わった?

自主規制と法的規制、どちらが有利

金融庁側は自主規制の導入の遅さを問題視していますが、すでに広告表現の見直しや審査・融資の厳格化など、一定程度の規制は進められています。
更なる規制が求められるのであれば、法的規制の導入など、より強制力の強い仕組みの導入がおこなわれる可能性は十分にあると言えるでしょう。

おわりに

かつてさまざまなトラブルを起こした反省から厳しい規制が導入された消費者金融カードローンの隙間を埋める形で、銀行カードローンは貸出残高を大きく伸ばしてきました。
その結果、銀行カードローンにも消費者金融カードローンがかつて起こした問題が起きています。銀行の自主規制の導入が進められていますが、その効果は定かではありません。
今後の銀行カードローンをめぐる動向は、要注目と言えそうです。

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