
いわゆる「生活保護」で支給される生活扶助について、2018年秋からの3年間で総額160億円程度の削減が決まったと報じられ、さまざまな反応を呼んでいます。
今回は、決定した生活保護の削減の内容と、カードローンとの関係を見てみましょう。
今後3年間で5%、総額160億円の削減が決まった生活保護
都市部は引き下げ、地方は引き上げ
今回の見直しの対象となったのは、生活扶助の基準額が低所得世帯の生活費を上回った都市部の子どもが2人いる夫婦子育て世帯や65歳の単身世帯などで、最低生活費を下回る地方の町村部の子ども1人の母子家庭の世帯などは基準額が引き上げられます。
母子加算は減額。児童養育加算は上積み
見直しの内容を見てみると、母子家庭に支給される「母子加算」は月平均で2万1000円から1万7000円に引き下げる一方、子育て世帯に支給する「児童養育加算」は支給対象が現在の中学生までから高校生までに引き上げられ、一律1万円の支給となります。
また、大学や専門学校への進学を後押しするため、来春の入学者5000人を対象に進学時に自宅生は10万円、1人暮らしは30万円の給付金を設置するとしています。
当初案の14%引き下げから下げ幅を縮小
当初の見直し案では、最大14%の引き下げが検討されていましたが、専門家会議で反対意見が相次いだことや受給者からの反対の声が大きかったから、引き下げ幅は5%に縮小されました。
生活保護制度の仕組みと今回の見直し
健康で文化的な最低限度の生活を保障する?生活保護
そもそも生活保護とは、憲法に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ために、生活が困窮している人に対して困窮の程度に応じて主に金銭的な支援をおこない、健康で文化的な最低限度の生活を保障して自立を助ける制度です。
居住地域や世帯構成によって支給額は異なる
支給される保護費は地域や世帯の状況によって異なり、厚生労働大臣が定める「級地区分表」により市町村単位で6段階に分けられ、11月から翌年3月までの冬季加算の基準にのみ使用される5段階の区分が設けられています。
実際に支給される扶助は医療扶助や生活扶助、教育扶助など8種類があり、年齢や性別、健康状態など、個人や世帯の生活状況によって支給状況は異なります。
5年に1度の見直しでは2回連続の引き下げ
厚生労働省は5年に1度、生活扶助の基準額と一般世帯のうち収入が低いほうから10%以内の世帯の1か月の平均支出を比較し、見直しを実施しています。今回の見直しは、前回見直しに続いて2回連続となっています。
生活保護を受給している人はカードローンを利用できる?
ここまで見てきて気になるのは、生活保護の受給中にカードローンに申し込みをして審査に通るのか?ということです。インターネットでは「意外と借りられた」という体験談は少なくありませんが、実際にはそれほど簡単ではないようです。
カードローンの審査では申し込み内容や信用情報を参考して申込者の返済能力を審査します。そのため、ほとんどのカードローンでは、申し込み条件として「安定・継続した収入がある人」という条件を設けています。
生活保護を収入とみなして申し込む方法もありますが、これで審査を通ることは簡単とは言えません。仮に審査に通って借り入れができたとしても、受給者は保護司やケースワーカーによって定期的に支給された生活保護の使い道が調査されます。ここでカードローンを利用して「健康で文化的な最低限度の生活」を超える生活をしていることが明らかになり、その後の受給の妨げになったという事例もあることから、生活保護の受給中はカードローンの借り入れは原則として控えるべきでしょう。
おわりに
さまざまな問題をはらみながらも、最後のセーフティーネットとして維持されている生活保護は、カードローンとの相性は良いとは言えません。
どちらかしか利用できないと考えて、生活保護に頼らない安定した収入を得られる状況をつくることが、カードローンを利用するもっとも確実な道と言えそうです。