
マイナス金利政策の導入によって収益が低下しているメガバンクを中心に、「口座維持手数料」の徴収について本格的な検討をはじめていると一部新聞が報じました。
これまでも何回か導入が検討されてきた口座維持手数料ですが、なぜ再び検討されているのでしょうか。
今回は、口座維持手数料の導入が検討されている背景と、仮に導入されたときのカードローンへの影響を見てみましょう。
海外の金融機関では一般的な「口座維持手数料」
口座残高に応じて発生する「口座維持手数料」
海外の金融機関では一般的な口座維持手数料は、一定の残高を下回ると手数料が発生する仕組みです。
日本では銀行をはじめとする金融機関の維持コストは無料というイメージが根強く、過去に何度も口座維持手数料やそれに類する仕組みの導入は検討されましたが、利用者の反発を考慮して見送られたという経緯があります。
2018年中の導入が検討されている?
2017年末に産経新聞が報じた口座維持手数料の導入の検討ですが、2018年1月時点では正式に発表されたものではありません。しかし各種報道では2018年度中には何らかの形で導入が決まる可能性は高いと報じられています。
日本銀行の「マイナス金利政策」と金融機関への影響
当座預金の一部にマイナス金利を付与する「マイナス金利政策」
マイナス金利政策とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金(日本銀行当座預金)を、3つの階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利(基礎残高)・ゼロ金利(マクロ加算残高)・マイナス金利(政策金利残高)を適用する、非伝統的金融政策に分類される金融政策の1つです。
マイナス金利政策で銀行の利ざやが悪化している?
マイナス金利政策の導入によって、預金金利と貸出金利の利回り差である「利ざや」は1%を切る低収益が続き、融資業務では収益を稼げない状況が続いています。
銀行をはじめとする金融機関は人工知能(AI)やフィンテックの導入により業務の効率化を進めて収益の確保を図っていますが、コスト削減をあわせて収益拡大の方法を探しています。
口座維持手数料は使用の有無にかかわらず口座があるだけで手数料が発生するので、金融機関にとっては収益源の1つとして非常に魅力的といえるでしょう。
口座維持手数料はカードローンに影響するか?
口座維持手数料の導入は金融機関離れを招く?
日銀はマイナス金利政策の導入にあたって、「国民が直接マイナス金利を負担することはない」と説明していました。マイナス金利政策により金融機関の収益が低下し、結果として口座維持手数料が導入されることになれば、事実上の国民負担と言えます。
ある調査会社のアンケート調査の結果では、仮に口座維持手数料が導入されれば、4割以上が口座の解約を検討すると回答しています(オリコン調べ)。
口座開設が求められる銀行カードローンには悪影響?
銀行は近年、企業向け融資にかわる新たな収益源として各種ローンを中心に個人向け融資を積極的に開拓していますが、一部のインターネット専業銀行(ネット銀行)や地方銀行では、カードローンの申し込み条件として口座開設を求めています。
仮に口座維持手数料が導入されれば、審査の厳格化が進んでいる銀行カードローンの申し込みに何らかの影響があることは十分に考えられます。
おわりに
現時点では一部新聞の報道にとどまる金融機関の口座維持手数料の導入ですが、仮に報じられた通りに導入されるのであれば、銀行カードローンの申し込みに影響する可能性は少なくないといえます。
厳格化が進む審査と合わせて、その動向には今後も要注目と言えそうです。