
赤い看板で知られる「三菱東京UFJ銀行」を中心とするメガバンク「三菱UFJフィナンシャル・グループ」が、2018年(平成30年)4月1日に銀行名を「三菱UFJ銀行」に変更しました。
表面的には単なる社名変更に見えますが、その裏にはさまざまな動きがあると伝えられています。今回は、社名変更に至る合併前の銀行各行の略歴を振りかえってみましょう。
名称から「東京」が抜けて「三菱UFJ銀行」になる
三菱UFJフィナンシャル・グループは、2018年(平成30年)4月1日に傘下の三菱東京UFJ銀行の名称を「株式会社三菱UFJ銀行(英文名:MUFG Bank,Ltd.)」に変更しました。今回の行名変更は、主なグループ会社の名称を「三菱UFJ」に統一した上で、各社が担う機能のコンセプトを明確にするためのものとされています。
三菱UFJフィナンシャル・グループにつながる各銀行の歴史
三菱財閥(グループ)の中核企業だった「三菱銀行」
国内最大の財閥であった三菱財閥の中核企業として知られていたのが、三菱銀行です。1880年(明治13年)に郵便汽船三菱会社(現在の日本郵船)から分離・独立した三菱為換店を起源とする三菱銀行は、1919年(大正8年)に正式に株式会社三菱銀行として設立されました。
戦前は三菱財閥をバックに店舗数に比べて取引高がはるかに大きい状態が続いていましたが、第二次世界大戦中に「戦時統合」に基づいて実施された一県一行主義により、東京地区を中心に店舗網の充実が進み、名実共に大銀行として知られるようになります。
戦後の財閥解体によって一時は千代田銀行に改名しましたが、1953年(昭和28年)に元の三菱銀行へ戻し、三菱重工業・三菱商事とともに旧三菱財閥の企業が再集結した「三菱グループ」の中核企業として知られるようになります。
1996年(平成8年)に東京銀行と合併して、株式会社「東京三菱銀行」となり、2005年(平成17年)にUFJホールディングス(UFJHD)を救済合併することで、三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱東京UFJ銀行として発足しました。
外国為替銀行として認められた「東京銀行」
今回の名称変更で名前が消えた東京銀行は、実質的な前身に貿易決済を主な業務としていた特例銀行の「横浜正金銀行」を持つ、かつての外国為替銀行です。
貿易金融・為替に特化していた横浜正金銀行の業務を受け継ぎ、日本で唯一の外国為替銀行として知られていましたが、銀行間の相互接続ネットワーク(BANCS)にも参加するなど、便宜上都市銀行として扱われていました。
1970年代までは主に日本企業の海外進出の支援や国外でのシンジケート・ローン等に強みを発揮した東京銀行は、バブル崩壊後の1990年代には何度も合併検討が報じられましたが、最終的には1996年(平成8年)に三菱銀行と合併、三菱東京銀行となりました。
設立からわずか4年で消滅した「UFJ銀行」
比較的順調に合併や経営統合が進んだ三菱東京銀行に対して、交渉がまとまらずすんなりと進まなかったのがUFJ銀行です。
当初はあさひ銀行と東海銀行を中心に、持ち株会社方式で経営統合する方針でしたが、経営統合に向けた交渉が長引く中で、銀行再編に取り残された都市銀行大手の大和銀行と三和銀行がこの経営統合に興味を持ちます。
当初はよりゆるやかな持ち株会社の下でのシステム統合を目指していたこの統合は、三和銀行が「三和東海あさひ銀行」の発足を主張したためにあさひ銀行が構想から離脱。結局、三和・東海銀行の合併という形で決着しました。
この合併で経営規模は大きくなったものの経営難は続き、発足からわずか4年で三菱フィナンシャル・グループに救済合併され、世界有数の預金量のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループが発足しました。
続く派閥争いの結果?進まない統合
このように複数の都市銀行の合併や経営統合により世界でも最大規模のメガバンクとして発足した三菱東京UFJフィナンシャル・グループですが、その内実では合併した3銀行の派閥争いが続いていたと伝えられています。
このような派閥争いはサービス面にも及び、旧三菱東京支店では旧UFJの一部サービスを受けられず、反対に旧UFJ支店では三菱東京の一部サービスが受けられない状態が合併後しばらく続くなど、サービス面で統合が成立したとは言えない状況が続きました。
おわりに
これまでは規模のメリットによる安定性以外に統合のメリットが見えにくい状態が続いていましたが、統合から一定以上の時間が経ったことや懸案だったシステム統合も進んだことから、今回の名称変更をきっかけに、「本当の統合」に向けて一歩前進しはじめたようです。
今後、傘下の三菱UFJ銀行や消費者金融、関係の強い地方銀行が提供するカードローンにどのような影響があるのか、三菱UFJフィナンシャル・グループと、三菱UFJ銀行の動向には要注目と言えそうです。