農家にとって、台風や虫害などの農作物をダメにしてしまう災害は非常に大きな打撃になってしまいます。
兼業農家であればもうひとつの仕事の収入が期待できますが、専業農家の場合は被害が甚大であれば収入が無くなってしまうことも考えられます。
そういった場合に補償制度が役立ちます。
今回は農家に対しての災害補償制度について紹介します。
農家の不安定性
農家は非常に収入が不安定な職業です。
まず、農作物が無事に収穫できなければ収入が発生しない可能性があります。
育てている過程で悪天候や災害に見舞われれば作物がダメになってしまい、大きな損害を被ることになります。
また、収穫した作物が売れなければいけません。
最近では収穫できてもカタチがいびつなものだと売れないこともあるので、非常に農家にとっては厳しい時代になっていると考えられます。
特に収穫前に災害などで農作物がダメになってしまうと他に収入源となる職業のある兼業農家はまだしも、農業だけで生計を立てている専業農家は生活にも大きな影響がでてきます。
そういった農家のリスク面を考慮して、国は「農業災害補償制度」を設けました。
農業災害補償制度とは
前述のとおり、農家には大きなリスクがあります。
そのリスクによる被害を軽減し、農業の安定を計るための補償制度が「農業災害補償制度」です。
農業災害補償制度は「農業災害補償法」に基いて、台風や火災などの災害、虫害などの不慮の事故による農家の損害を補償し、国内の食料供給の安定を目指す公的な補償制度です。
仕組みとしては予め農家が共済掛金を出し合い、台風や火災などで被災した農家に対して共済金を払う、農家の自主的な補償制度の側面があります。
農業が自然災害や天候などの様々なものに影響を受けやすい産業であることを鑑みて、掛け金の一部は国が支払っています。
また、一定以上の規模の農家は加入が義務付けられています。
補填の対象
基本的に機能するのは台風などの風水災害や虫害、鳥獣害などに被災したときですが、共済事業の種類によって補償する対象に違いがあります。
- 畑作物共済:大豆、小豆、さとうきび、茶、馬鈴薯、そば
- 農作物共済:水稲、陸稲、麦
- 果樹共済:リンゴ、ぶどう、なし、ももなど
この他にも馬、牛、豚などを対象にした「家畜共済」や建物が対象の「建物共済」、トラクターなどの農機具が対象の「農機具共済」などがあります。
細かく種類を分けていることから、農業に対する国の制度の手厚さがうかがえます。
農業協同組合法
農業災害補償制度とは別に、農業協同組合(JA)が取り扱っている「農協共済(JA共済)」というものもあります。
こちらは農業協同組合法に基いて定められています。
名前が似ているので混同してしまいそうですが、「農業災害補償制度」が「農業災害補償法」に基づいているのに対して、こちらは「農業協同組合法」に基づいています。
また、農業災害補償制度が農作物や家畜、農耕具などの共済であるのに対して、こちらは生命共済、自動車共済などを取り扱っています。
基本的には農業組合員を対象とした共済で、保険のような感覚であるといえます。
農協共済は任意加入ですが、農業を営む人なら知っておくべき組織と制度です。
おわりに
今回は農家に対しての災害補償制度について説明しました。
農業は自然を相手にする産業であり、国にとって重要な産業でもあるため、国からの手厚い補償制度が用意されています。
農業協同組合の共済と合わせることで災害や不慮の事故にあっても安心できます。