
2010年(平成22年)は、貸金業界にとって改正「貸金業法」の完全施行という大きな変化があった年であり、このときに導入された「総量規制」はカードローンの審査に大きく影響しています。
今回は総量規制に関する基本的な知識と、総量規制がカードローンの審査におよぼす影響がどのようなものかを見てみましょう。
過剰な貸し付けを抑制する「総量規制」
総量規制とは、改正貸金業法によって定められた消費者金融や信販会社などの「貸金業者」による貸し付けのうち、年収の3分の1を超える金額の貸し付けを原則として禁止する規制です。
総量規制により貸金業者は1社ごとに50万円、他社と合わせて100万円を超える貸し付けでは源泉徴収票など収入証明書類の提出が義務付けられ、年収の3分の1を超える金額の貸し付けが原則禁止されています。
一定割合以上の金額の貸し付けを原則禁止とした総量規制ですが、
- 住宅ローン・リフォームローン、これのつなぎ融資
- オートローン
- 高額療養費の貸付け
- 有価証券担保貸付け
- 居宅以外の不動産担保貸付け
などの一部融資は貸金業法施行規則第10条の21第1項により例外とされています。
なぜ「改正貸金業法」は制定されたのか
改正貸金業法の公布・施行と同時に導入された総量規制は、利用者の利便性を犠牲にする仕組みです。なぜそのような仕組みが導入されたのでしょうか。その大きな原因として、多重債務や自己破産の原因の1つとされたグレーゾーン金利の撤廃があげられます。
借入額を制限する仕組みがなかった旧貸金業法では、カードローンの利用が多重債務や自己破産の原因となり、返済苦による悲惨な事件・事故が後を絶ちませんでした。事件・事故の原因となる過剰な貸し付けの防止を目的として、総量規制は導入されたのです。
平成18年改正の特徴
グレーゾーン金利をめぐって争われた裁判の最高裁判決で、グレーゾーン金利が違法と認められました。これによりわずか1年足らずで貸金業法は全面改正されることとなりました。
そのポイントを見てみると、
- 借り手の自殺による保険金での弁済や強引な取り立てを禁止した「貸金業の適正化」
- みなし弁済の廃止や出資法の上限金利での貸し付けを違法とした「グレーゾーン金利の廃止」
- ヤミ金融に対する罰則を懲役5年から懲役10年に強化した「ヤミ金融対策の強化」
があげられます。改正貸金業法は2006年(平成18年)に成立・公布されましたが、2010年(平成22年)の第5次施行で関連法も含めた全ての施行が完了しました。
貸金業法の厳格化の平成22年の第5次施行
平成18年の貸金業法改正は5度に分けて施行されましたが、最後の施行となった2010年(平成22年)の第5次施行では、
- 貸金業務取扱主任者の必置
- 財産的基礎要件の再引上げ
- 行為規制の強化
- 過剰貸付規制の強化
- みなし弁済制度廃止
- 利息制限法改正
- 出資法改正
など、改正貸金業法の肝とも言える部分の一斉施行が実施されています。
銀行カードローンも影響を受けている総量規制
貸金業法は消費者金融や信販会社などの「貸金業者」を規制する法律であり。銀行法の監督下にある銀行が提供するカードローンは総量規制の対象を受けてきませんでした。
そのため、銀行カードローンの貸出残高が急激に拡大して消費者金融・信販会社のカードローンの貸出残高を上回り、銀行カードローンの利用が原因となる自己破産が急増するなど、銀行カードローンが原因となるお金のトラブルが急増することとなりました。
これを受けて2017年(平成29年)2月に関連団体が審査の厳格化をはじめとする「申し合わせ」をおこない、銀行カードローンの審査の自主規制を強めていますが、日本弁護士連合会(日弁連)が貸金業者と同様の総量規制の導入を求めるなど、審査が厳格化する方向に進んでいます。
おわりに
利用者保護を目的として導入された総量規制ですが、それにより貸金業者のカードローンは、利便性が銀行カードローンに比べて劣るものとなりました。
結果として銀行カードローンの利用残高が急増、新たなトラブルの原因となるなど、カードローンの利用をめぐるトラブルを減らすという当初の思惑とは、異なる方向に進んでいます。
規制による利用制限も重要ですが、トラブルのない利用のためには、申し込み・借り入れ時点で余裕を持った利用計画を立てることが欠かせないと言えるでしょう。