
手軽にお金が借りられるカードローンは便利なサービスですが、安易な利用を続けていると、返済トラブルや自己破産など、金銭トラブルの原因ともなります。
カードローンが原因となった大きな金銭トラブルとして知られているのが、「グレーゾーン金利」です。
今回は、カードローンの規制法である「出資法」と「利息制限法」という二つの法律と、この二つの法律の間で発生して大きな社会問題となった「グレーゾーン金利」について見てみましょう。
融資の上限金利を定めた「出資法」と「利息制限法」
友人・知人の間でのお金のやり取りであれば、最終的に全額の返済をすれば、返済が多少遅れても問題になることはまずありません。
これに対して個人と業者との契約であるカードローンは、多少の返済の遅れも大きな問題になるため、確実な返済のために「遅延損害金」を設定しています。
この遅延損害金を含めて、貸金業者による強引な貸し付け・取り立てを規制する法律が、「出資法」と「利息制限法」です。
本来は契約者保護のための法律だったこの二つの法律ですが、制度上の不備を放置したために社会問題となったグレーゾーン金利を生み出すこととなりました。
わずか9条から成り立つ「出資法」
1954年(昭和29年)に制定された「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」は、わずか9条という比較的短い条文ですが、その短さとは裏腹に、高利の貸し付けに歯止めを掛ける重要な法律です。
出資法の制定当初は年109.5%という考えられないような上限金利も認められていましたが、度重なる改正により段階的な引き下げがおこなわれました。
- 1954年から1983年11月1日…年109.5%
- 1983年11月1日から1986年10月31日…73%
- 1986年11月1日から1991年10月31日…年54.75%
- 1991年11月1日から2000年5月31日…年40.004%
- 2000年6月1日から2010年6月17日…年29.2%
- 2010年6月18日から現在…年20%
債務者保護を目的とした「利息制限法」
出資法とは別に、貸金業者を対象として貸し付けた金額に応じて上限金利が設定する形で利息を制限した法律が「利息制限法」です。
利息制限法に定められた上限金利は、
- 元本が10万円未満の貸し付け…年20.0%
- 元本が10万円以上100万円未満の貸し付け…年18.0%
- 元本が100万円以上の貸し付け…年15.0%
であり、貸付金額が大きくなるにつれて上限金利が小さくなるのが特徴です。
二つの法律の違いから生まれた「グレーゾーン金利」
このように出資法と利息制限法の定める上限金利は、2010年に出資法が改正されるまで大きな開きがあり、ほとんどの貸金業者では利息制限法ではなく出資法の利率を目安とした貸し付けがおこなわれていました。
出資法が優先された理由としては、上限金利が大きかったことはもちろんありますが、罰則の軽重がいちじるしく不公平だったことも見逃せません。
出資法違反は5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は3,000万円以下の罰金)と、貸金業の登録取り消しや業務停止などの重い罰則があるのに対して、利息制限法は罰則そのものがありませんでした。
それだけではなく、貸金業法43条により定められた条件を満たした任意の利息支払いは、利息制限法は適用外となる「みなし弁済」とされ、利息制限法は有名無実との法律となり、「グレーゾーン金利」が発生したのです。
関連法改正によるグレーゾーン金利の廃止
こうして発生したグレーゾーン金利は、貸金業者の過剰な貸し付けと取り立てが社会問題として取り上げられるようになるのと合わせて問題視されるようになります。
2006年(平成18年)には最高裁判所がみなし弁済を無効とする内容の判決(平成18年1月13日最高裁判所第二小法廷判決)を下します。
この判決を受けて関連する法律がまとめて改正されたことでグレーゾーン金利は廃止され、グレーゾーン金利での返済部分は「過払い金」として認められました。
過払い金については2006年から10年間の時限措置として、貸金業者に対して返還請求ができる「過払い金返還請求」とすることもあわせて認められました。
おわりに
このように利息制限法と出資法、貸金業法が複雑に絡みあって発生したのが「グレーゾーン金利」です。
カードローンで借り入れをするときには、書類に目を通した上でサインが必要ですが、安易にサインをすると不利な条件に同意しかねません。
サインをする前に、どのような内容が書かれていて、カードローン会社と利用者のどちらに有利なのかを把握することがトラブルのない利用の第一歩となります。