
最近テレビで目にすることの多くなった「過払い金請求」に関するCM。正確には数年前からですが、弁護士・司法書士事務所がしきりに働きかけ、カードローン側に過払い金の返還を求めています。
この払い過ぎた金利というのは、俗にいうグレーゾーン金利が引き起こした弊害です。
今回は、そんなグレーゾーン金利がどういったものだったのかをご紹介し、改めてカードローンにおける金利を考えてみたいと思います。
グレーゾーン金利とは
グレーゾーン金利は、各種カードローン、クレジットカード、大手デパート系などのカード会社が、利息制限法の上限を超えて利息を取り続けてきたことに対し名付けられた、高すぎる金利です。
グレーゾーン金利が存在した背景には、利息に関する法律である「利息制限法」と「出資法」という法律の、上限金利の違いが大きく影響していました。
利息制限法と出資法
そもそもこれらの法律の役割は以下のようになっています。
利息制限法:債権者が貸付時にどのくらいの利息を設定していいのかを定めた法律
出資法:罰則が適用される上限金利を定めた法律
このように、1954年時点での金利に関する法律では、両者の役割が微妙に違うことで、紛らわしいながらも同時に存在していたという経緯があります。
ちなみに利息制限法の上限金利は現在と同じ15%~20%(借入金額によって異なる)でしたが、問題は出資法の上限金利。当時は29.2%というとても大きな利率になっていたのです。
試しに実質年率29.2%で、50万円を30日間借りた場合のシミュレーションをしてみましょう。計算方法は「借入残高×実質年率÷365日×30日」で求められるので、50,0000円×29.2%÷365日×30日=12,000円となり、わずか1カ月の間に1万円を超えるほどの大きな額になり、返済をしていても元金が一向に減らないということも珍しくありませんでした。
複数の会社から借り入れを行っていた人などは、高すぎる金利を支払うことができず、借りてはまた返すという負のスパイラルに陥りました。
なぜグレーゾーン金利が許されてきたのか
2010年の法改正以前は、上限金利を超えた場合の罰則規定は出資法にのみ定められていて、利息制限法には明確な記載がありませんでした。利息制限法についての規定は、出資法に触れない範囲で借り主の同意を得られた場合は、出資法の上限である29.2%の金利を受け取ることができる。というまさにグレーなもの。
債権者側は、まさにこの利息制限法のグレーな部分を利用して高い金利を設定していたということになります。
貸金業法にも落とし穴が
法改正以前の時代は自社の利益を優先するあまり、消費者金融、その他信販会社など、ほとんどの債権者がグレーゾーン金利を利用して貸し付けを行っていました。これは利息制限法の上限金利を侵したとしても、罰則がないからという単純な理由だけではありません。実は、貸金業法というもう一つの法律で定められていた「みなし弁済」という仕組みに守られていた部分もあったのです。
みなし弁済とは、改正前の貸金業法の43条に定められていた法律で、一定の条件を満たせば利息制限法を超える金利で貸し付けをおこなっても良いとされていたものです。
この仕組みにより、後にグレーゾーン金利問題に発展してしまうほどの高金利での貸し付けがおこなわれていました。
法改正後は、「債務者が利息制限法に違反する金利であることを認識しながら任意で支払った場合」というケースを除いて、全てのみなし弁済が認められなくなったのです。この出来事は金利を見直すべきだという世間の流れを後押しするには充分過ぎるものでした。
利息制限法の今

引用:日本賃金業協会
従来の出資法では、上限金利が29.2%と非常に高いものになっていましたが、2010年6月の法改正以来、現在では20%まで引き下げられています。20%を超える金利で貸し付けを行っていたということが判明した時点で出資法違反となり、刑事罰に処されることになります。
長い間変わらなかった金融業界の利率というのが大幅に見直され、債務者・債権者共に無理のない範囲で借り入れ・貸し付けを行わなければいけなくなりました。
おわりに
今回は、かつての利息制限法と出資法の間に生まれたいびつなグレーゾーン金利について見てきました。
法改正によって安定したカードローンの利用ができるようになったことは、債務者にとっても債権者にとってもメリットになったのではないかと思います。
カードローンを利用するときには、くれぐれも計画的に借り入れをしましょう。