
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、保有する株式・債券を公表する新しい運用方針を発表しました。この方針は、カードローンの申し込み・借り入れにどのように影響するのでしょうか。
今回は年金を運用するGPIFの組織としての概要と、今回の運用方針の変更がカードローンに与える影響を見てみましょう。
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
GPIFの役割とは
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とは、厚生年金保険法及び国民年金法の規定に基づいて厚生労働省が所管する独立行政法人です。
厚生労働大臣から寄託された積立金の管理及び運用をおこない、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定を目的としています。
世界最大の機関投資家として知られるGPIF
GPIFの運用資産はアメリカの社会保障年金信託基金(SSTF)に次ぐ世界第2位の金額を誇り、年金基金単独としては世界最大であることから、「世界最大の機関投資家」とも呼ばれています。
市場運用の開始からの累計収益額は約50兆円
前身の年金資金運用基金が設立された2001年度(平成13年度)から年金積立金の自主運用ははじまっていますが、市場運用開始からの収益率は年率2.99%、累積収益額は約50兆円、運用資産額は2014年度(平成26年度)末で137兆4,769億円と、リーマンショックや世界金融危機といった外部要因により一時的に大きく落ち込むことがあっても、トータルではプラスを出しています。
不透明さが指摘されていたGPIFの運用と方針転換
これまでGPIFは、株式や債券の保有状況は原則非公開として、運用方針と運用成績の公表にとどめてきましたが、情報公開への要求の高まりなどを踏まえて、透明性を高めるために、株式や債券の保有状況も含めて原則公開とする方針転換を決定しました。
今回の方針転換により今後公開される情報について、報道から見てみましょう。
公的年金の積立金約140兆円を国内外の株式や債券で運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は14日、保有銘柄や時価総額などを全面開示することを決めた。市場に影響する懸念から保有状況は非公表だったが、透明性を高めることにした。
この日開かれた外部有識者でつくる運用委員会(委員長=新井富雄・東大名誉教授)で開示方法を決定した。株式は1.銘柄名2.証券コード3.株数4.時価総額、債券は1.発行主2.時価総額をGPIFのホームページで閲覧できるようにする。
(後略)
引用:GPIFの保有銘柄、全面開示へ:朝日新聞デジタル
(前略)
開示対象は、株式の銘柄、株数、時価総額。債券では発行体と時価総額。約140兆円の巨額資産を運用するGPIFは、来年からの開示に向け、個別銘柄情報の公表を段階的に始める。
14年度末時点の保有分は今月29日に、15年度末の保有分は今年11月25日に、それぞれ明らかにする。計2回で公表する銘柄情報が市場に与える影響を検証し、問題がなければ、毎年7月に前年度末の情報を全面的に開示する。
引用:7月全面開示、来年から = 前年度末の保有株情報 – GPIF:時事ドットコム
今回の方針転換によって考えられる影響
保有資産の詳細な公開による不適当な価格形成
GPIFがおこなうパッシブ運用は、事前の方針決定にしたがって株式・債券を保有する投資方法です。パッシブ運用そのものが市場に与える影響は小さいものの、GPIFは投資金額の大きさが原因となる不適当な価格形成を懸念して、資産状況を原則非公開としてきました。
今回の方針転換が取引市場での価格形成に何らかの影響を引き起こせば、その影響は小さいものとは言えません。
株式中心のポートフォリオへの影響
GPIFの資産構成割合(ポートフォリオ)の見直しを進めていて、従来の債券中心の運用から、株式に重点を置いた運用への転換を進めています。
一般的に株式は債券と比べるとハイリスク・ハイリターンであり、実際に株式中心のポートフォリオへの転換が進んだ2015年には年間の運用損失が5兆円を超えるなど、従来のポートフォリオよりも利益・損失とも大きくなる傾向が報じられています。
GPIFの方針転換とカードローンに与える影響
GPIFは年金運用を目的とする独立行政法人ですが、実際の運用は業務委託を受けた国内外の証券会社や信託銀行などが担当しています。また、従来の債券主体から株式主体の運用に切り替えたことで、GPIFは機関投資家としての役割をより積極的に果たすことが期待されます。
今回の方針転換は、この2つの面から日本の株式市場の活性化が期待でき、マイナス金利政策で業績悪化が懸念される銀行の業績に良い影響を与え、ひいてはカードローンの借入条件の見直しにつながることが期待できます。
おわりに
総額140兆円もの資産を運用するGPIFの動向は、日本経済だけではなく世界経済にも大きく影響することが考えられます。その意味では今回の原則公開への方針転換は歓迎できる決定と言えるでしょう。
動向や運用成績を確認する意味でも、これから公開される情報には注目したいものです。