
2016年1月末の金融政策決定会合で導入が決定されたマイナス金利政策ですが、導入から半年がたったことでその効果と副作用が明らかになりつつあります。
マイナス金利政策は日本経済やカードローンの申し込み・借り入れにどのような影響を与えているのでしょうか。
今回はマイナス金利政策の概要とその効果、カードローンに与える影響を見てみましょう。
マイナス金利政策の概要とその影響
マイナス金利政策がカードローンに与える影響を見る前に、現在導入されているマイナス金利の概要を振りかえっておきましょう。
日銀の導入したマイナス金利政策の概要
マイナス金利を一言で説明すると、日本の中央銀行である日本銀行が市中銀行から預かる「日銀当座預金」の一部にマイナス0.1%の金利を適用することで、お金の市中流通をうながす仕組みです。
一口に日銀当座預金と言いますが、その内容を詳しく見てみると、
- 前年度の平均残高である「基礎残高」
- 準備額と貸出支援制度の対象となる利用額に基礎残高の一定割合となるマクロ加算額を加えた「マクロ加算残高」
- 基礎残高とマクロ加算残高を除いた「政策金利残高」
の3つに分けられます。
マイナス金利政策は、開始当初の基礎残高(210兆円、プラス0.1%)とマクロ加算残高(40兆円、プラスマイナス0%)を除いた政策金利残高(10兆円、マイナス0.1%)に対してマイナス金利を付与するとしています。
マイナス金利政策のもたらした効果と副作用
このような目的に基づいて導入されたマイナス金利政策ですが、導入から半年を経たことで、その効果と副作用が明らかになりつつあります。
マイナス金利政策の効果としては、経済への大きな波及効果が期待できる住宅ローンの契約件数と着工件数の増加をはじめとして、一定の効果があったことがあげられます。
マイナス金利の導入に合わせて、各金融機関は提供する住宅ローン金利の引き下げをおこないました。
これにより住宅所有の金銭的負担が大きく軽減されたため、大手住宅メーカー7社の7月の戸建て速報値の注文住宅の請負契約額は5社が前年実績を上回る高い水準での受注が続いています。
住宅関連投資では一定の効果が出ているマイナス金利政策ですが、反面その副作用も表面化しつつあります。
もっとも大きなところでは、預金と融資の金利差である利ざや縮小により、2016年の第1四半期決算では多くの銀行が前年同期比で減益となったことがあげられます。
また、国債を中心に運用する金融商品の販売停止・終了や、預金利率の引き下げや手数料無料の撤廃をはじめとして個人向けサービスの改悪が相次ぐなど、企業だけではなく個人の資産運用に影響を及ぼしつつあります。
マイナス金利政策はカードローンに影響したのか
マイナス金利政策の導入は功罪両面で一定の効果を発揮しつつありますが、気になるカードローンにはどのように影響したのでしょうか。
マイナス金利政策とカードローンの関係について見てみましょう。
実質年率(利率)の引き下げ
カードローンの借り入れを比較・検討するときに注目されるポイントはいくつかありますが、特に重視されるのが実質年率(利率)の多寡です。
マイナス金利政策の導入により、カードローンの実質年率(利率)を期待する向きもありましたが、実際にはどうなったのでしょうか。
4月ごろから散発的にネット銀行カードローンを中心として、最低利率の引き下げがおこなわれました。
しかしこの動きに追随したのは一部の銀行カードローンにとどまり、カードローン業界全体のトレンドとはなりませんでした。
引き下げを実施したカードローンも、一部では数%の引き下げ幅でしたが、ほとんどはコンマ以下の引き下げにとどまり、利下げという言葉のインパクトの大きさとは裏腹に、その内容は小幅なものでした。
借入限度額の引き上げ
カードローンを比較・検討するときに実質年率(利率)と並んで注目したいポイントが、借入限度額の大きさです。
銀行の新たな収益源として個人向けの手数料ビジネスが注目されている現在、マイナス金利政策の導入に合わせて借入限度額の引き上げを期待する意見もありました。しかしこちらは利率の引き下げよりもさらに小さな動きにとどまり、事実上ほとんど動きがないままに終わっています。
借入限度額の引き上げがほとんどおこなわれなかった理由として、既に制度の上では数百万円から1千万円の設定があることや、実際の運用では借り入れ・返済状況に応じて段階的に引き上げられるため、大きな限度額を設定するメリットが双方になかったことなどが理由として考えられます。
おわりに
このように、マイナス金利政策の導入はカードローンに対して一定の影響があったことは否定できないものの、その因果関係や影響の大きさは明確ではなく、直接影響があったとは言いにくい部分があります。
しかし今後も銀行の個人向けサービスの拡充が続けば、更なるサービス改善の可能性は期待できます。