
2016年9月中旬、メガバンクのみずほ銀行とソフトバンクが共同出資する新しいローンサービスが開始されることが公表されました。
この共同出資では、注目を集める「フィンテック」を活用した新しい形での融資をおこなうことから一部で注目を集めています。
注目されているフィンテックとはどのような技術であり、今回の新サービスではどのように利用されるのでしょうか。フィンテックとレンディングの関係と、今回リリースされるサービスについて見てみましょう。
注目を集める「フィンテック」と「レンディング」とは?
今回のリリースでも盛んに繰りかえされているキーワードとして、「フィンテック」と「レンディング」の2つがあります。最近耳にする機会が増えたこの2つのキーワードを見てみましょう。
IT技術と金融サービスが連携する「フィンテック」
フィンテック(Financial technology = Fintech)とは、情報通信(ICT)技術を駆使して従来の金融サービスの見直しや新しい金融サービスを生み出す動きの総称です。
フィンテックとして扱われる領域は家計簿や資産運用などのパーソナルなものから、会計ソフトや貸し付け、決済などのパブリックなものまで含まれます。
そもそも金融業界は、規模の大小を問わず大量の個人情報をあつかう関係から早期のICT技術の導入が進んでいた業界であり、ICT技術との親和性が高い業界と言えます。
フィンテックとして扱われる技術は大小さまさまなものがありますが、特に注目を集めているのは仮想通貨やブロックチェーン、ソーシャルレンディング(レンディング)などがあげられています。
「借りたい人」と「貸したい人」を結ぶ「レンディング」
フィンテックの1つであるレンディングとは、「借りたい人」と「貸したい人」をインターネットで結びつける新しい融資形態です。
従来の形の融資契約では契約までにさまざまな手続きが必要であり、借りたいとき・貸したいときに使いにくいものでした。
しかしレンディングではインターネットを活用することで借りたい・貸したいニーズを低コストで結びつけることが可能になりました。
従来の融資事業と比べると仕組み上のメリットがあるため、レンディングを活用することで借り手は低金利、貸し手は高利回りという形で利益を大きな利益還元が期待できると言われています。
新しいレンディングサービスはどのようなものか
今回発表されたレンディングサービスがどのようなものになるのか、プレスリリースから見てみましょう。
新しいレンディングサービス開始に向けた合弁会社設立について
(前略)
また、本サービスは、お客さまのデータ提供や追加情報入力でスコアアップなどが可能となるスコアリングモデルを活用した、スマートフォンで手続きが完結する国内初のスコア・レンディングです。スコアリングモデルとは、みずほ銀行が保有するビッグデータやローン審査ノウハウ、ソフトバンクが保有するビッグデータやAIによるデータ分析のノウハウを融合したものであり、これにより審査応諾範囲の拡大、競争力のある金利水準を実現していきます。
なお、本サービスは、両社と取引のないお客さまにもご利用いただける予定です。本会社は、与信審査のためにお客さま情報を取り扱う予定ですが、本サービスを利用するお客さまから、この利用目的に同意いただくことを前提としています。本会社ならびに新サービスの詳細については、決定次第、速やかにご案内します。
(後略)
引用:新しいレンディングサービス開始に向けた合弁会社設立について
従来の消費者金融から一歩踏みこんだ個人向け融資サービス
プレスリリースを読む限りでは、まったく新しい形の金融サービスがはじまるような内容です。
しかしその内容を詳しく見てみれば、「スマホ(ケータイ)という個人情報の塊を活用した個人向け融資サービス」であることがわかります。
既にケータイ代金の支払いをはじめとする一部の情報は、CLの審査に影響するほど重視されています。
ビッグデータとしてより細かいデータを収集すれば、所有者がどの程度の社会的信用(スコアリング)があるのか正しく把握する極めて有用なツールになります。
今回のみずほ銀行とソフトバンクの協業は、より踏み込んだかたちでケータイの情報を活用する第一歩と言えるでしょう。
利便性と引き換えにどこまで個人情報を渡すのか
今回発表された新しい融資サービスでは、ビッグデータやAIを組み合わせることでより正しい審査をおこない、対象外だった人にも貸し付けができるとしています。
正しい審査のためにはより広範囲の情報提供が欠かせませんが、どこまで個人情報を収集・利用しているかは要注意と言えるでしょう。
おわりに
利便性の向上が期待されるみずほ銀行とソフトバンクの新しい個人向け融資サービスですが、引き換えにこれまでよりも広範囲の個人情報の提出が求められます。
利便性と引き換えにどこまで個人情報を提供するのか、フィンテックやビッグデータなどの耳障りのよい言葉に惑わされずに考え必要がありそうです。