世界有数の長寿国となったことで、リタイア世代には年金以外に安定した収入源が求められています。
そこで現在注目を集めているのが、保有する不動産を担保としてお金を借りる「リバースモーゲージ」です。
今回はリバースモーゲージの特徴とメリット・デメリットを見てみましょう。
保有不動産を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」
リバースモーゲージとは、「保有する不動産を担保に銀行や自治体からお金を借りて、借りたお金は契約満了もしくは死亡時に担保とした不動産を売却して一括返済する仕組み」のことです。
リバースモーゲージの発祥と言われているのは1960年代のアメリカであり、日本では東京・武蔵野市が1981年に導入したのが最初の事例と言われています。
その後、1990年代のバブル経済とその崩壊による不動産価格の低迷などにより日の当たらない時期が続きました。
しかし2000年代に年金不安が声高に叫ばれるようになるとにわかに注目をあつめ、2010年代には3大メガバンクが相次いで参入する人気商品となっています。
人気を集めつつあるリバースモーゲージの融資方法として、
- 年金方式…定期的に一定額を受け取れる
- 一括融資方式…融資可能額の範囲内で、まとまった金額を一括して受け取る
- 随時返済方式…決められた金額枠の中で、いつでも任意の金額を受け取れる
があります。
リバースモーゲージを利用するメリット
リバースモーゲージは、担保となる不動産の評価価格に基づいて設定された貸付限度額の範囲内で融資をする「逆抵当融資方式」と呼ばれる融資方法を取り入れています。
これにより、契約期間中であれば不動産を所有したまま融資が受けられるのがリバースモーゲージを利用するもっとも大きなメリットと言われています。
借りたお金は自由に使えるリバースモーゲージ
リバースモーゲージで融資を受けたお金の使いみちは、カードローンと同様に特に限られていません。
リタイア世代が主な利用者であるリバースモーゲージの資金使途は、老人ホームや高齢者向け賃貸住宅などの入居・住み替え費用や老後の趣味の費用、介護費用などがあげられます。
リバースモーゲージの利用に向いている人は?
使い方によっては非常に魅力的なリバースモーゲージですが、不動産という担保が必要になる以上、誰でも利用できる仕組みではありません。
- 自宅を残したまま、手持ちの資産を確保したい
- 年金に加えて余剰となる生活資金が欲しい
- 自宅はあるが、子どもがいない夫婦
- 有料老人ホームへの入居を考えているが、自宅は手放したくない
- 不動産を相続する親族がいない
これらの特徴にあてはまれば、リバースモーゲージの利用を真剣に検討するメリットはあると言えそうです。
リタイア世代は平均2000万円程度の貯蓄を取り崩してしのいでいると言われ、不動産という資産があれば利用できるリバースモーゲージの需要は大きいと思われます。
リバースモーゲージを利用するリスクとは?
担保となる不動産があれば契約期間中は融資を受けられるリバースモーゲージですが、利用に当たってはその仕組み上回避できないリスクに注意する必要があります。
長生きリスク
もっとも大きなリスクとしては、契約期間を越えて長生きしてしまう「長生きリスク」があげられます。
リバースモーゲージでは、長生きするほどに融資を受ける期間も長引き、借入金が増えることで借入金が担保の不動産評価額を上回る「担保割れ」の可能性があります。
金利上昇リスク
リバースモーゲージで融資を受ける際の金利は、多くの場合市場金利に連動した変動金利型となっています。
マイナス金利政策が導入されている現状では心配ありませんが、将来的に市場金利が上がれば、最終的な返済金額が当初の想定を上回る「金利上昇リスク」に巻きこまれることは十分に考えられます。
評価額低下リスク
リバースモーゲージの融資額を決定するのは、担保とした不動産評価額です。
景気低迷や不動産価格の下落により不動産評価額が下落すれば、融資限度額の引き下げを招き、年金方式であれば定期的に受け取る金額の引き下げを招く「評価額引き下げリスク」に直面することとなります。
相続人リスク
意外と見過ごされがちなリスクとしては、「相続人リスク」があげられます。
契約満了後に担保の不動産を売却して一括返済するリバースモーゲージでは、返済方法として自宅を担保とするケースがほとんどです。
仮に二世帯・三世帯住宅で同居している世帯があれば、長生きリスクと合わせて法的トラブルを招く可能性があることは考える必要があります。
おわりに
自宅を担保として一定期間の融資を可能とするリバースモーゲージは、カードローンの借り入れが難しい、リタイア世代の有力なお金の借り方の一つです。
しかし、世界有数の長寿国であり新築志向の強い日本では、想定を超える長寿や不動産価格の下落といった他にはないリスクがあります。
安定した老後を送るためにも、安定収入のないリタイア世代は一つの収入源に頼らないお金の借り方を考えておく必要があるでしょう。