
5年ごとに実施される財政見通しを受けて、民主党政権時代から議論されていた年金制度の見直しが「年金改革法案」として形が見えてきました。
今回の改正法案ではどのような点が改正され、カードローンの利用にどのように影響するのでしょうか。ポイントと現行の年金受給の仕組み、カードローンの利用への影響を見てみましょう。
提案されている年金改革法案のポイントとは?
はじめに、今回の改革法案のポイントを見てみましょう。
今回の改革法案のポイントとしては、
- 従業員数500人以下の中小企業に勤める短時間労働者も厚生年金の加入対象とする
- 自営業者などの第1号被保険者の産前産後の期間(4カ月)の保険料を免除
- 現役世代の年金水準を確保するため、年金額の改定方式(マクロ経済スライド調整・賃金スライド)を見直し
- 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス体制の強化
- 無年金対策として受給資格期間を25年から10年に短縮(受給資格期間短縮法案)
があげられています。
短時間労働者や妊婦に恩恵の大きい今回の改正法案
今回の改正法案でもっとも大きな恩恵を受けるのは、約50万人にも及ぶ中小企業ではたらくパート・アルバイトなどの短時間労働者の人々です。
現状では国民年金だけの加入にとどまるこれらの人々も厚生年金・健康保険に加入できるようになります。
更に自営業者など「第1号被保険者」に該当する人々も、産前6週間、産後8週間に相当する4カ月間の国民年金保険料が免除されるだけではなく、満額の基礎年金が保証されます。
また、現在の受給条件である25年以上の受給資格期間が10年に短縮され、無年金者を減らすことが期待されます。
知っておきたい年金の受給条件
納付・受給の両面で改善が期待される改正法案ですが、現在の受給条件はどのようなものなのでしょうか。
厚生年金の被保険者期間があり、老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たした方が65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。
ただし当分の間は、60歳以上で、
- 老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしていること
- 厚生年金の被保険者期間が1年以上あることにより受給資格を満たしていること
の2点を満たせば65歳まで老齢厚生年金が特別支給されますが、その給付条件は1941年(昭和16年)4月1日を境にことなります。現状の年金支給条件を見てみましょう。
昭和16年4月1日以前に生まれた方
【国民年金(老齢基礎年金)】
- 支給要件…保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上であること。
- 支給開始年齢…原則として65歳。60歳から減額された年金の繰上げ支給や、66歳から70歳までの希望する年齢から増額された年金の繰下げ支給が請求できます。
【厚生年金保険(老齢厚生年金)】
- 支給要件…老齢基礎年金の支給要件を満たしていて、厚生年金保険の被保険者期間が1カ月以上あること。65歳未満の方に支給する老齢厚生年金については、1年以上の被保険者期間が必要。
- 支給開始年齢…原則として60歳
昭和16年4月2日以後に生まれた方
【国民年金(老齢基礎年金)】
- 支給要件…保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上であること。
- 支給開始年齢…原則として65歳。60歳から減額された年金の繰上げ支給や、66歳から70歳までの希望する年齢から増額された年金の繰下げ支給を請求できます。
【厚生年金保険(老齢厚生年金)】
- 支給要件…老齢基礎年金の支給要件を満たしていて、厚生年金保険の被保険者期間が1カ月以上あること。65歳未満の方に支給する老齢厚生年金については、1年以上の被保険者期間が必要。
- 支給開始年齢…昭和16年(女性は昭和21年)4月2日以後に生まれた方は、60歳から65歳になるまで、生年月日に応じて、支給開始年齢が引き上げられます。
年金受給者は難しい?カードローンの利用
このように年金受給者の拡大が期待できる改正法案ですが、カードローンの利用にはどう影響するのでしょうか。
ほとんどのカードローンは申し込み条件として「安定した収入があること」を重視していますが、消費者金融カードローンを中心に、多くのカードローンでは年金受給者を申し込み対象から外しています。
一部のカードローンでは年金受給者であっても申し込みを認めているものの、借入限度額が著しく制限されるなど使い勝手の良さで大きく劣るのが実情であり、改正法案がカードローンにマイナスとなることは十分に考えられます。
もちろん、受給期間が短縮されることでこれまで年金受給の対象外となっていた人々も受給対象となることで、これまでカードローンを利用できなかった人々が新たに借り入れできるようになることも考えられます。
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おわりに
さまざまな問題が取りあげられながらも老後の収入の大きな柱となる年金制度は、カードローンも申し込み・借り入れに影響するなど無関係ではありません。
加入者や免除期間、受給資格の発生などさまざまな面で変わる今回の法案の動向には、要注目と言えそうです。