全国銀行協会(全銀協)の個人情報の運用とカードローンへの影響

全国銀行協会(全銀協)の個人情報運用とカードローンへの影響

全国銀行協会(全銀協)の個人情報の運用とカードローンへの影響

手軽に利用できることから需要が高まっているカードローンは、その手軽さを担保するために銀行や消費者金融は申込者に関するさまざまな情報を保管・運用しています。先日、その運用の一端がうかがわれる判例が報じられました。
カードローンを提供する銀行や消費者金融は、個人情報をどのように保管・運用しているのかを見てみましょう。

元暴力団員の改名をめぐる判例と報道

銀行や消費者金融の個人情報の運用について見る前に、注目を集めた判例と、その報道について見てみましょう。

指定暴力団「山口組」傘下の組織を8年前に脱退した40代男性が、地元・兵庫県内の家庭裁判所に、改名を認められたことがわかった。6月下旬、経営する会社の給与振り込みに使う口座の開設を申し込んだところ、地元の信用金庫が拒否。男性は、暴力団員などを登録する信金のデータベース(DB)に名前が残っているためだとし、社会生活への支障を訴えていた。

許可は10月19日付。改名手続きに詳しい弁護士によると、暴力団排除に使われるDBに絡んで改名が認められるのは珍しいという。

家裁への申立書などによると、男性は上納金を払うのが厳しくなっていた2008年春に組を脱退。今年6月、信金の支店長に「当金庫の規定」を理由に、口座の開設を断られた。組員時の情報がDBに残っているかを尋ねたが回答はなく、支店長は朝日新聞の取材に「個別の案件には答えられない」としている。

(以下略)

出典:組を抜けて8年、口座開けぬ元組員家裁が改名認める:朝日新聞デジタル

金融機関が定めている「暴力団排除条項」とは?

全国銀行協会や全国信用金庫協会に加盟する銀行や信金は「暴力団排除条項」により、暴力団関係者に対する口座開設や貸し付けを認めないとしています。
暴力団関係者として認められる人は、

  • 現役の暴力団組員
  • 組の威力を利用して不法行為をしたり、組に資金提供したりする準構成員
  • 脱退して5年未満の元暴力団組員

が当てはまります。
申込者が暴力団関係者に該当するかどうかは、事件報道や警察が捜査する口座照会などで得られた情報に基づいた自前のデータベースを参照していますが、このデータベースへの情報の登録や削除に法的な取り決めはなく、登録される内容も各社の判断に委ねられているのが現状です。

全国銀行協会が公表している「暴力団排除条項」の例文

全国銀行協会では、加盟銀行の規約の例文を公開していますが、その中にはデータベース作成の根拠とも言える暴力団排除条項に関する例文も存在します。その内容を見てみましょう。

第○条(反社会的勢力の排除)
1.私または保証人は、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約いたします。

  • 暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること
  • 暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
  • 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に暴力団員等を利用していると認められる関係を有すること
  • 暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
  • 役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること

2.私または保証人は、自らまたは第三者を利用して次の各号の一にでも該当する行為を行わないことを確約いたします。

  • 暴力的な要求行為
  • 法的な責任を超えた不当な要求行為
  • 取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
  • 風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて貴行の信用を毀損し、または貴行の業務を妨害する行為
  • その他前各号に準ずる行為

3.私または保証人が、暴力団員等もしくは第1項各号のいずれかに該当し、もしくは前項各号のいずれかに該当する行為をし、または第1項の規定にもとづく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明し、私との取引を継続することが不適切である場合には、私は貴行から請求があり次第、貴行に対するいっさいの債務の期限の利益を失い、直ちに債務を弁済します。
4.手形の割引を受けた場合、私または保証人が暴力団員等もしくは第1項各号のいずれかに該当し、もしくは第2項各号のいずれかに該当する行為をし、または第1項の規定にもとづく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明し、私との取引を継続することが不適切である場合には、全部の手形について、貴行の請求によって手形面記載の金額の買戻債務を負い、直ちに弁済します。この債務を履行するまでは、貴行は手形所持人としていっさいの権利を行使することができます。
5.前2項の規定の適用により、私または保証人に損害が生じた場合にも、貴行になんらの請求をしません。また、貴行に損害が生じたときは、私または保証人がその責任を負います。
6.第3項または第4項の規定により、債務の弁済がなされたときに、本約定は失効するものとします。

引用:融資取引および当座勘定取引における暴力団排除条項参考例の一部改正について – 全国銀行協会(一部表記変更)

暴力団排除条項とカードローンの関係

このように銀行や信用金庫などは口座開設や融資などの大元となる部分から資金源を断ち切る方向に動いています。カードローンもその例外ではなく、暴力団排除条項に似た条項を設けることで、暴力団関係者への融資を拒否しています。
しかし暴力団側も名前を出さずに経営する「フロント企業」などを通すことで審査を通る例が後を絶たず、イタチごっこが続いているのが現状です。

おわりに

金融機関の暴力団への対応は年々厳しくなっていますが、暴力団側もその締め付けをかいくぐり、あの手この手で資金調達を図っています。
カードローン会社の対応も含めて、このイタチごっこはしばらく続くと思われます。

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