消費者金融カードローンの縮小と銀行カードローンの拡大の影響

消費者金融カードローンの縮小と銀行カードローンの拡大

消費者金融カードローンの縮小と銀行カードローンの拡大の影響

消費者金融など貸金業者に対する規制を強化する改正貸金業法が成立してから、2016年12月で10年がたちました。
貸出金利の上限引き下げや融資規制により激減した貸金業の後を埋めるように急増しているのが、貸金業者を傘下に納めた銀行カードローンのシェア拡大です。
激変するカードローンのシェア争いの様子と借り入れへの影響はどのようなものなのでしょうか。

「三悪」と改正貸金業法による貸金業者の急減

かつての貸金業界は高金利、過剰融資、過酷な取り立ての「三悪」で知られ、東証一部上場企業でもフィクションのヤミ金融のような取り立ても珍しくなく、「過払い金」や「多重債務」などさまざまな問題を引き起こしたことで社会問題となります。
平成18年(2006年)の最高裁判決をきっかけに上限金利の引き下げや総量規制の導入、貸金業者に対する規制強化などが盛り込まれた改正貸金業法の成立につながり、最盛期には2万社を越えた貸金業者は、2015年度末には約2千社と激減しました。

続く過払い金返還請求訴訟と縮小する貸付残高

1990年代から2000年代にかけて普及した貸金業は、改正貸金業法の成立から続く過払い金返還請求訴訟と貸付残高の急激な縮小により苦境に陥っています。
貸金業者でつくる業界団体「日本貸金業協会」が発表する年次報告書(JFSA白書)を参考に、貸金業界の移り変わりを見てみましょう。

累計6兆円を越えた過払い金返還請求

貸金業全体の重い負担となっているのが、上限金利を超えた利息の返還を請求する「過払い金返還請求訴訟」です。
2015年度単体で2500億円前後、累計6兆円を超えたと言われる過払い金返還請求訴訟は、時効は完済から10年と定められました。
改正貸金業法成立から10年目の2016年は目安ですが、完済時期によって時効は異なるため、訴訟そのものはこれからもしばらく続くと言われています。

3分の1まで減少した貸付残高

過払い金返還請求訴訟の増加と裏腹に減少しているのが、貸金業界の勢いをあらわす貸付残高です。
改正貸金業法成立の2006年度末には消費者・事業者向けを合わせて約41兆円と過去最高の貸付残高を記録したものの、2015年度末には約22兆円と10年で半減しました。
特に落ちこみが激しいのが消費者向け無担保融資であり、平成20年(2008年)から平成25年(2013年)まで毎年2割から3割の減少が続き、2015年度末の貸付残高を見ると4兆4千億円と、2006年度末と比べて4分の1に急減しています。

貸付残高の急減により進んだ業界再編

これだけ急激な貸付残高の減少は、大規模な業界再編のきっかけとなり、財務局登録・都道府県登録を合わせて最盛期には3万社を越えた貸金業者の登録数は、2015年度末には約2千社と激減しました。
再編の影響は大手貸金業者も例外ではなく、東証一部上場の武富士は業績や資金繰りの悪化により会社更生法の適用を申請、大手のアコムやプロミス(現・SMBCコンシューマーファイナンス)は、銀行グループ傘下に加わることで生き残りを図っています。

貸金業の縮小と銀行カードローンの拡大

このように急激に縮小している貸金業とは裏腹に、安定して規模拡大を続けているのがメガバンクや地方銀行が提供する銀行カードローンです。
三菱UFJ銀行のカードローン「バンクイック」は、貸付残高が1,661億円(平成25年3月末)から3,114億円(平成27年3月末)へと2倍近くに拡大。3年後には4800億円を目指すとしています。
三井住友銀行やみずほ銀行、地方銀行やインターネット専業銀行などもこの流れに乗り、銀行カードローンの貸付残高は約4兆6113億円(平成27年3月末)と、貸金業の貸付残高に並ぶ水準まで拡大しています。
銀行カードローンは貸金業と比べて利率が低く限度額が大きいことによる使い勝手の良さ、魅力的な各種サービスが支持されたことで急激に残高を拡大していると考えられます。

おわりに

貸金業に比べると低利率と大きい限度額が魅力となる銀行カードローンですが、同じカードローンである以上、最終的に借りたお金は返済する必要があります。
返済負担が小さいと言っても、無計画な利用は思わぬ金銭的な負担を招くことにもつながるため、カードローンを利用するときには計画的な利用は欠かせません。

消費者金融カードローンの縮小と銀行カードローンの拡大の影響
最新情報をチェックしよう!