
コンビニエンスストア大手のローソンが、金融業参入に向けた準備会社を11月下旬に設立、数年以内のサービス開始を公表しました。
セブン&アイ・ホールディングスとイオンに次ぐ流通業界から金融業への参入にはどのような背景があり、カードローンの利用にはどう影響するのでしょうか。相次ぐ異業種からの金融業への参入と、影響を見てみましょう。
利便性向上をうたうローソンの金融業参入
ローソンは今回の準備会社設立にあたって会社設立の理念を明らかにしています。
(前略)
今般、金融分野において、公共料金等の収納代行サービスや共同ATMの設置などに加え、自ら金融サービスを提供する銀行業への参入を検討するための準備会社を設立することを決定致しました。
ローソンは、全国に12,648店舗(2016年9月末現在)あります。その拠点を活かし、お客様の利便性につながり、コンビニエンスストアと銀行のシナジー効果が出せるような新サービスを検討して参ります。新銀行は、ローソンが生活インフラとしてコンビニエンス事業を展開していることを活かし、口座の資金決済機能などのサービスを通じてさらなる利便性向上に努め、お客様の生活に役立つ金融サービスを展開していくことを目指します。
なお、新銀行の概要、具体的なサービス内容、スケジュール等の詳細は、今後、準備会社にて鋭意検討して参りますが、決まりましたら改めてお知らせ致します。
引用:銀行業参入のための準備会社設立について|ローソン
この理念を読むと、ローソンの金融業参入は、コンビニエンスストア本来の物販と、サービスのシナジー(相乗)効果を狙ったもののようです。
「セブン銀行」が存在感を増すセブン&アイHD
流通大手の相次ぐ金融業への参入には、先陣を切ったセブン銀行(セブン&アイHD)の成功が影響していると言われています。
2015年度の経常利益を比べるとその差は明確であり、ローソンATMを運営するローソン・エイティエム・ネットワークス(LANs)が60億円、同業のイーネットの同5.5億円に対して、セブン銀行は371億円と桁違いの利益を計上しています。
独自経営のセブン銀行に対して、共同出資会社であるLANsやイーネットは手数料収入が限定的であることや、コンビニ独自の金融サービスを提供できない点が、この違いを生んだ大きな要因と言われ、ローソンの金融業参入は独自の金融サービスを目指す側面も大きいようです。
進む参入準備と参入に向けた今後の課題
金融業参入に向けてローソンは着々と準備を進めていますが、既にいくつかの課題もささやかれています。
「三菱グループ」傘下で確実な免許取得を目指す準備会社
ローソン本体を見てみると、2016年9月には筆頭株主の三菱商事がローソンの子会社化を発表、2017年初頭に予定している株式公開買付(TOB)により、約1,500億円を投じて出資比率を33.4%から50%程度に引き上げるとしています。
準備会社はローソンの100%出資ではなく、三菱UFJ銀行も5%を出資。人事面では、代表取締役会長に財務省OBの岩下正氏、社長に新生銀行常務執行役員の山下雅史氏を据えるなど、確実な免許取得に向けた準備を進めています。
地方銀行との関係と金融サービスの内容が課題
確実な免許取得を目指して準備を進めているローソンですが、免許取得がなっても実際の参入には、地方銀行との関係見直しや金融サービスの開発という課題があります。
銀行免許を持たないローソンは、地方銀行の協力を得てLANsを運営していますが、ローソンの金融業参入にめどが立てば、協力は対立に転じます。
ローソンの金融業参入と現在の地方銀行との協力関係でどのようにバランスを取るのかは、安定したサービス提供に向けた大きな課題の1つです。
より大きな課題としてあげられるのが、魅力的な金融サービスの開発です。
物販の指標である1日当たりの1店売上高(日販)では、セブン-イレブンとローソンの差は約10万円程度ですが、ATMの1日の入出金回数を比較すると、セブン銀行はローソンATMの約2倍とその差は大きく広がります。
ローソンの金融業参入を成功させるためには、客数の増加はもちろん、独自の金融サービスの開発・提供が欠かせません。
ローソンの金融業参入はカードローンにどう影響する?
ここまでローソンの金融業参入の是非を見てきましたが、カードローンの借り入れ・返済にはどのように影響することが考えられるでしょうか。
独自経営によりセブン-イレブン外にも積極出店しているセブン銀行ATMの設置台数が約2万台あるのに対して、LANsとイーネットATMは約1万台と大きく引き離されています。
ローソンの金融業参入は、ATM設置台数の増加による利便性の向上と、カードローンの借り入れ・返済の選択肢が広がることが期待できます。
また、セブン銀行と同様に少額のカードローンサービスの提供をはじめれば、選択肢が増えることも期待できるポイントと言えるでしょう。
おわりに
注目のローソンの金融業参入の動きですが、カードローンへの影響は提携ATMの増加や新たなカードローンサービスの提供などが期待されますが、その成否は未知数です。今後の動向は、要注目と言えるでしょう。