
マイナス金利政策の導入などによる運用環境の悪化が叫ばれる中、ゆうちょ銀行が個人向け融資を本格化のためにカードローンサービスの提供に向けて動いていることが報じられました。
2007年の郵政民営化によって設立されたゆうちょ銀行ですが、その動向は大いに注目されています。今回のカードローンサービス参入の報道は、カードローンサービスにどのように影響するのかを見てみましょう。
ゆうちょ銀行のカードローンサービス参入の内容
はじめに、ゆうちょ銀行がカードローンサービス参入に向けてどのように動いているのかを、共同通信の報道を引用して見てみましょう。
ゆうちょ銀行が個人向け融資に本格的に参入する方向で最終調整に入ったことが26日、分かった。政府と2月にも個人向けカードローン事業の認可に向けた正式協議に入る。ゆうちょ銀行が直接、個人向け貸し出しを手掛けるのは初めて。
(中略)
早ければ2018年度中にも事業を始めたい考えだ。ただ、システム構築に時間がかかるため、19年度以降になる可能性もある。ゆうちょ銀行は金融機関の少ない地域にも拠点があり、利用者にとっては便利になる。
引用:ゆうちょ銀行、個人融資に参入へ 政府と2月にも認可協議 | 2017/1/27 – 共同通信 47NEWS
郵政民営化によって設立された「ゆうちょ銀行」
郵政民営化によって設立されたゆうちょ銀行は、どのような特徴を持つ銀行なのでしょうか。
ゆうちょ銀行は郵政民営化関連法の公布による郵政民営化にともない、2007年(平成19年)10月1日に前身の株式会社ゆうちょから商号変更して発足しました。
主に郵便貯金事業等を引き継いだゆうちょ銀行は、郵便貯金が取り扱ってきた商品・各種サービスが名称を変えて事実上引き継がれています。
ゆうちょ銀行は貯金残高約175兆円(総資産約196兆円)と、2012年(平成24年)3月末現在で日本最大の預金金融機関であり、みずほ銀行以外で全国47都道府県全てに店舗(支店・出張所)を有しています。
ゆうちょ銀行発足後にはじまった個人向け融資サービス
巨大金融機関であるゆうちょ銀行ですが、これまでさまざまな個人向け融資商品を提供してきましたが、その認知度はあまり高いとは言えません。現在提供している主な個人向け融資サービスを見てみましょう。
クレジットカード
ゆうちょ銀行発足に前後して個人向け融資商品として最初に提供されたのが、ゆうちょ銀行本体が発行するクレジットカードです。
郵政省(郵便局)時代から簡易生命保険カード・郵便貯金キャッシュカードと一体化した共用カードは提供されていましたが、民営化前後の2006年(平成18年)から2009年(平成21年)にかけて順次取扱・提携を終了して、ゆうちょ銀行として発行する「JP BANKカード」に一本化されています。
提携するカードブランドは「VISA/Master」と「JCB」の2大ブランドと提携することでクレジットカードとして必要な機能は提供しているものの、サービス面ではプロパーカードとほぼ同様の内容です。
変額年金保険
2008年(平成20年)5月下旬から取り扱いをはじめたのが、メガバンクや地方銀行などの民間銀行が積極的に販売を進めていた「変額年金保険」です。
契約者の支払った保険料の運用実績によって年金額が変動する変額年金保険は、取扱店舗が限られる(直営店82店舗)ことや商品の入れ替わりが激しいことなどから、これも認知されているとは言いにくい商品です。
住宅ローン事業・カードローン
スルガ銀行と提携して2008年(平成20年)5月から提供がはじめられたのが、住宅ローン・カードローンです。
スルガ銀行ゆうちょ専用支店への口座開設で利用できる住宅ローンですが、融資業務に関するノウハウの取得が主な目的であり、付随するカードローンと合わせて、今回のカードローンサービスの直接参入につながるものとなりました。
直接参入の方針が明らかになった現在でも継続して提供されているだけではなく、申し出があれば新たな提携にも積極的に検討すると言われています。
カードローン事業の直接参入はどのような影響を及ぼすか
今回報じられたゆうちょ銀行のカードローン事業への直接参入は、競争の激しいカードローンサービスにどのように影響を及ぼすと考えられるでしょうか。
量的・質的金融緩和やマイナス金利政策、長短金利操作付量的・質的金融緩和など、日本銀行(日銀)がおこなう金融政策、それ以前から続く融資先の減少などにより、銀行は企業向け融資から個人向け融資に注力しています。
その中でもカードローンサービスは各銀行が競ってサービス提供を進めている商品であり、国内最大級の金融機関であるゆうちょ銀行が直接参入することで更なる競争の激化が考えられます。
利用者視点では競争の激化はサービスの改善が期待できますが、サービス提供者として見ると競争の激化は体力勝負となり、魅力あるサービスを提供できなければ最終的に資金量に負ける懸念が拭えません。
おわりに
国内最大級の金融機関であるゆうちょ銀行の個人向け融資サービスの直接参入は、銀行カードローンの激しい争いに大きく影響しそうです。
ゆうちょ銀行の今後の動向は、カードローン利用者・事業者を問わず要注目と言えるでしょう。